恋し、挑みし、闘へ乙女
「――この件が片付くまで? それでいいのですか?」

だからかもしれない、乙女が少し素直になったのは。

「嗚呼、作家活動を止めろとは言わない」
「絶対に!」

「約束する」と綾鷹は腰を折り、椅子に座る乙女の頭上にキスを一つ落とす。

「それで、ご用はなんですの?」

慣れたもので、乙女はそれをサラリとかわす

「嗚呼、実は陛下のお伴で午後から一週間屋敷を留守にする。淋しいだろうがおとなしく留守番をしているのだよ」

留守! 乙女の瞳が輝く。

「嬉しそうに見えるのは気のせいかだろう?」
「ええ、被害妄想の気があるのでは?」

乙女がシレッと反論すると、「君に関してはそうかもしれないね」と綾鷹もシレッと答える。

「とにかく、異国のお菓子をたくさん持って帰ってあげるから、くれぐれもヤンチャをするんじゃないよ」

「異国の地!」と乙女は羨ましそうに綾鷹を見る。

「そんな捨てられた子犬が『私も連れて行って』というような目をしても連れてはいけないんだ。仕事だからね」

「――仕事なら仕方ありませんね」と乙女は残念そうに肩を落とし訊ねる。
< 83 / 215 >

この作品をシェア

pagetop