恋し、挑みし、闘へ乙女
「ああ、行ってくる」

そう言いながら、綾鷹は乙女の額に口づける。

「私との約束を忘れるな。無茶な行動は絶対に慎むのだよ」

くどい、と思いながらも「――承知しました」と乙女は従順に返事をする。
これもお菓子のためと我慢しながら……。




「お嬢様、私、綾鷹様に『くれぐれも乙女を宜しく』とお願いされました。ゆえに、綾鷹様がお帰りになるまでしっかりと監視させて頂きます」

「ミミにまで頼んでいったの?」

ハーッと深い溜息を吐き、乙女は「私って信用ないのね」と唇を突き出す。

「お嬢様……信用しろと言う方がお門違いです」

ミミの言葉に乙女は益々頬を膨らませる。

「私は自分に正直なだけ。それが周り人たちの思惑とちょっとズレているだけじゃない」
「そういうのを屁理屈と言うのです」

ミミがピシャリと返す。

「とにかくです! 私の顔を潰すようなことだけはしないで下さい」
「ミミは私の味方じゃなかったの?」

乙女が芝居めいた悲しげな表情を浮かべると――。
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