恋し、挑みし、闘へ乙女
「とにかくです。何があっても本日のお茶会で、綾鷹様のお顔を潰すようなことだけはしないで下さいまし!」

紅子の眼がギロリと乙女を見る。

「基本的な行儀作法は、もう身についておいでです。あとは思考です。どんな場面でも梅大路の者としての自覚をお持ち下さいませ。私からの注意はそれだけです」

「あら?」これで終わりなのと乙女は首を傾げる。

「あとはミミに任せます。ミミ、乙女様を今風のお嬢様に仕上げて下さいね」

「では、失礼します」

「意外ですね……」とパタンと閉まったドアを見つめながらミミが言う。乙女の同意見だった。

「今風のお嬢様って……いいのでしょうか? 由緒あるお茶会に?」
「紅子さんがいいと言っているのだからいいのでは?」

「でしたら!」とミミの顔がパッと輝く。

「先日雑誌に載っていたモダンガールなお洋服に致しましょう」
「そんなのあったかしら?」

梅大路に来てからからというもの洋服は全てオートクチュールだった。
それも堅苦しいものばかり!

「当然です! こんなこともあろうかと、密かに通販で買い揃えておりました。サンプル品ですので一点物ばかりです。誰かと被ることはありません」

ミミが鼻歌を歌いながらドレスルームのドアを開けた。
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