それは、愛だった。


 案外ホームルームが始まる二分前に着き、すでに集まっていたクラスのみんなからの視線が痛い。一番前の席のわたしと一番後ろの席の尚。寂しそうにしている尚に、あとでねと声をかけて、席に座った。

「遅れてきた、ふたり。自己紹介はみんな済んでいるから、してくれないか?」
 席に着くと、担任らしき男性が声を出した。童顔なのか幼くみえる。
「えと・・結城 尚です。」
「牧尾 律です・・」
「俺は二組担任で、数学担当の相川 力人(あいかわ りきと)だ。牧尾と結城だな。よろしくな。」

 関わりたくないばかりに、小さくはぁとだけ返す。やる気もないし、ほっといてくれオーラだけだして、机に突っ伏した。ホームルームの話が長くて、退屈に欠伸を出すと、隣から声が聞こえる。嬉しそうに浮足立った声で、なぁなぁと肩を叩く。

「・・・・なに。」
「俺の兄ちゃんも、律なんだ!あ・・と、俺は、松岡 夏生(まつおか なつき)な!よろしくな!律!」
「慣れ慣れしいんだけど・・まぁ、よろしく。松岡くん。」

 これが、『あの人』、松岡くんとの出会いだった。うるさくて、明るくて、よく笑う、どこかで憧れた存在だったのかもしれない。


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