つちかぶりひめ
「思ったより遠いのね…」
結構歩いたつもりなのに山の頂上ですらまだまだ道のりが長そうで、さくは一息つこうと道から逸れ森の茂みへと腰を下ろす。流石にこれ以上向かうと、帰り道は真っ暗になってしまいそうだ。一息ついたら今日はもう帰ろうと考え、携えていた包みを膝の上で広げた。
持参したおにぎりを食べていると、ざわざわとした声に加えて立派な牛車が宮の方からゆっくりこちらへ向かってきた。
「宮から…ってことはきっと高位貴族かしら」
自分には関係ないと思い直し、再びおにぎりに手をつける。牛車は茂みにいるさくには気付かず、前を通り過ぎたものの、少し行ったところで動きを止めた。
「暫しの間休憩となります」
道が開けている場所にて牛車は止まる。牛車の中に一声かけ、周りにいた臣下たちがそれぞれご飯の支度を始めた。あの位置にいられては引き返すにも鉢合わせてしまう。さすがにいち貴族の姫として、高位貴族と思われる行列の前で今の貧相な身なりを晒すわけにはいかず、早く動かないかなーっと途方に暮れていたさくは、静かにこちらに近づいてくる人影に気づかなかった。
.