つちかぶりひめ
十夜に連れられ、宿の裏へと場所を移す。
「さっきはびっくりしたわ」
「ごめん。私も今抜け出している状態だから、見つかるわけにはいかなくて」
「見覚えある牛車だなって思って見に行ったのだけれど、会えるとは思わなかったわ」
にこにこしながら嬉しそうにするさくの姿に、十夜は上がりそうな口角を抑えるため唇を噛みしめる。
「あの装飾の具合からいって、十夜様実はとっても高位な貴族様だったりするんじゃない?」
「それは…」
「さく姫様〜?もう始めちゃいますよー!」
十夜が口を開いたと同時に聞こえる、村人がさくを探す声。
「あっ、呼ばれてるみたい。残念だけど、また今度機会があればお会いしましょう」
「待って」
村人の元へと行こうとしたさくを引き止める十夜。その後発した言葉に、さくは大きく頷いた。
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