つちかぶりひめ


十夜に連れられ、宿の裏へと場所を移す。


「さっきはびっくりしたわ」

「ごめん。私も今抜け出している状態だから、見つかるわけにはいかなくて」


「見覚えある牛車だなって思って見に行ったのだけれど、会えるとは思わなかったわ」


にこにこしながら嬉しそうにするさくの姿に、十夜は上がりそうな口角を抑えるため唇を噛みしめる。

「あの装飾の具合からいって、十夜様実はとっても高位な貴族様だったりするんじゃない?」

「それは…」



「さく姫様〜?もう始めちゃいますよー!」



十夜が口を開いたと同時に聞こえる、村人がさくを探す声。

「あっ、呼ばれてるみたい。残念だけど、また今度機会があればお会いしましょう」

「待って」


村人の元へと行こうとしたさくを引き止める十夜。その後発した言葉に、さくは大きく頷いた。




.
< 19 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop