つちかぶりひめ
「御簾がある…」
さくの部屋に戻ってきた十夜は、さくと自分を遮る御簾を見て少し驚く。
「今更な感じはするけれど、一応私も貴族の姫だから…」
なんだか高慢っぽくて嫌よねと苦笑いするさくの前に、十夜も御簾を挟んで座った。
「今初めて若葉の姫がちゃんと姫なんだなって思った」
「それは失礼だと思うよ!」
面白そうに笑うさくの声は聞こえるものの、やはり御簾を挟むとさっきまでの傘とは比べものにならないぐらい笑い顔も見えない。
「…もう少し……」
「え?今何か言ったー??」
「何も。それより、今日は本当にありがとう。貴重な体験ができた気がするよ。このお礼はまたいつか。今日はこれでお暇させていただくね」
つい漏れたつぶやきをごまかした十夜は、日が沈む前に戻らねばと、さくにお礼を言い残し屋敷を後にした。
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