つちかぶりひめ
「十夜様!!」
「久しぶり」
木の陰から手招きした十夜に連れられて、さくも道から逸れる。
「最後に会えて良かった!」
「…最後ってどういうこと?」
会えた嬉しさとこれからもう会えないであろう寂しさを交えて伝えれば、事情を知らない十夜から当然聞き返された。
「今度ね、結婚することになったの」
「誰といつ…?」
驚いて眉間にしわを寄せた十夜に、相手は宮で働く官吏の殿方であること、次の大安の日の夜に家に来ることを告げる。
「若葉の姫はその方を慕っているの?」
「……一応貴族の姫だし、いつかはって思ってたの。これでお父様に孝行が出来るなら喜んで結婚するわ」
だから、もう会えない分沢山お話ししましょうと笑うさくを見て、十夜は何か考えたように頷いた。
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