つちかぶりひめ
「痛っ!!!」
その時、突然上に乗っていた青年が痛みを訴える。
「その姫の上からすぐにどけ」
同時に聞こえたその声の持ち主を、さくは目を開かなくとも理解し、今流した涙とは別の涙を溢れさせた。
「…草履を投げるとは、行儀が良くないんじゃないかな?」
「こんな夜更けに、嫌がる姫に無理をする方が良くないと思いますけど。そして、いいから早くそこをどいて下さいと言っているでしょう」
最早殺気とも捉えられるような鋭い怒気に、青年は軽く返事をしてさくの上から退く。
「兄に対して、その対応は良くないんじゃないのかな、十夜」
さくの元へと駆け寄り、自分の着ていた羽織りをさくへとかけた十夜を見ながら、青年は愉快そうに笑った。
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