つちかぶりひめ
「お兄様、って…?」
体を震わせながら十夜の服を掴むさくは、青年の発言に戸惑いを隠せない。
「あなたが兄様だとは思いたくはないですけどね」
十夜が返した言葉は、青年の言葉を裏付けるものであり、動揺するさくの姿を見た青年は嘲笑を漏らした。
「もう姫はこんな状態だし、十夜にはふさわしくないんじゃないかなぁ?」
「……兄様には関係ありません」
嘲笑うその視線から隠すように、十夜はさくを己の懐へと抱き寄せる。
お互いがお互いを睨み合い、硬直した状態を断ち切ったのは、娘の部屋から喧騒とした声が聞こえたために駆けつけた若葉の登場であった。
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