つちかぶりひめ
「さく姫!!大丈夫か!?」
勢いよく襖を開けた若葉が目にしたのは、睨み合う2人の青年と、そのうちの一方に守られるよう抱きしめられている自分の娘。
うち1人の青年は、若葉の姿を確認し、颯爽と屋敷を後にする。
「待て!!」と部屋の外へと出て行く青年を追いかけようとした若葉だったが、先ずはさくの確認をと侍女に検非違使への連絡を任せ、さくの元へと駆け寄った。
娘の無事にほっとしつつ、守ってくれている青年の顔を見て、次の瞬間には目を大きく見開いていた。
何故なら、さくを抱きしめる青年の姿は、己が官長の位に就くにあたり、宮で任命をしてくれた方の姿と同じだったからであった。
「…なぜ、皇子様がここに…」
自分の娘が何故この国の最高位とも言える皇子様に抱えられているのか、動揺を隠せない。
当然、若葉の漏らしたその言葉はさくの耳にも届き、ばっと顔を起こしたさくは、信じられないものを見るかのように、その顔を見つめた。
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