【完】はじめての…
その日の帰り道。

「ふぅ〜今日は思いっきり動いたから

すっきりしたな〜」と春菜。


「運動好きだもんね、春菜。

わたしなんかヘトヘトだよ〜」


「でもまぁ、花梨のこと

当ててたじゃん。

沙耶に当てられたけどさ。」


「そうだね、珍しく活躍したかな、

ね、わたし…」


「なーに、しょんぼりしてんの!

確かに当てられちゃったけどさ

当てたことに変わりないんだから!

まぁよく言えば、

当てられてから当てたら

中に戻ってこられるから

より良かったってだけじゃん?

あとはさ、デカみたいに

楽しめばいいのよ〜」


さすがポジティブな春菜。


わたしはついネガテイブだからか

そんな風に考えられる

春菜が羨ましかった。


「そだね、ありがと、春菜。」


「思ったこと言っただけだって〜」

とまんざらもなく

嬉しそうな春菜だった。


♡。.:・¤゚♡。.:・¤゚♡。.:・¤゚♡。.:・¤゚


「そういえば男子は

どうだったんだろうね?」と言うと


「さぁね?

それよりは運動会でリレーもあるしさ

そのときに見れれば十分だよ!」

と春菜。


そうだよね、ドッジボールに

夢中だった春菜は

その時に男子の方を見るなんて

ありえない。それこそ、

相手に当てられに行くようなものだ。




「あの人も走るのかなぁ…」



「ん?春菜?なんか言った?」

上手く聞こえなかったから聞くと、


「ううん、なんでもないよ〜♪」

となんだか嬉しそうな様子。


まぁ気にしても

悪いことじゃなさそうだし、いっか。


もう少しで家に着くときに、

自転車ですれ違う人がいた。


「あ!翔!」

とわたしが言うと


翔は自転車を降りて止まってくれた。


「ん?お前ら今帰りかよ。」


「え?普通に帰ってきただけって

いうか、翔が早いんだよー!」

と私が言うと、


「まぁな、これからサッカーしに

遊びに行くからさ。」と翔。


うわぁ…あんなに動いても

まだ動くなんて、わたしには

考えられない。

と思ってると、


「あ、まだ話す?

わたしこれから塾だから急ぐね!

またね〜!」と春菜。


「分かったー!また明日ね!」と言うと

春菜は手を振り返して

帰っていった。

塾か…

わたしも宿題やらなくっちゃ…。

なんてと思いながら、

春菜の帰る姿を見送ると、

「そういえば、お前、


相変わらずノロいよな。」と翔。



へ?


「どういうこと?」


「ドッジボールだよ、今日の。

せっかく当てたっていうのに、

当てられてんだからさ。

逆だったらよかったのにな。」


と言うのに対して




「それさっき、春菜にも言われたし…


そんな2度も言わなくていいよ…」

とがっかりしていると

「ったく、

そんなしょんぼりすんなって。


そんだけ当てたことが嬉しいよりも


ショックだったんだろ?」


え?


「違うのかよ。」


「いや、テレパシー使ったの、翔?」


「なわけないだろ…

前からさ、そうだっただろ?

あんまり人を傷つけるようなこと

好きじゃないってさ。

だからそうなのかなってさ。」

前って…わたし、そんなこと

いつ言ったかな…?

「そっか…。なるほどね、、。

あ、そういえば遊びに行くの時間平気?」


「お?そうだな、

そろそろ行くわ、じゃな」


「気をつけてね〜!」と翔が

自転車を漕いで行く後ろ姿に

向かって手を振った。


なんやかんや、心配してくれたんだ、


翔。優しいところあるじゃん。


ってあれ?

なんか今日は翔のこと

考えてばっかだな、、

あれか幼なじみだからか。


なんて自分の中で区切りをつけて、

わたしは家のドアを開けた。

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