俺様社長に甘く奪われました
「熱っ!」
莉々子がつい大きな声を上げると同時にピアノの音が止む。
心配してくれたのか、望月が「どうした」とキッチンへやってきた。
「いえ、なんでもないです」
そうは答えたものの、莉々子がいつまでも頬に手をあてていることで察した望月は、素早くIHを切り、冷凍庫から氷をひとつ取り出して布巾でくるんだ。
「これで少し冷やせ」
「……ありがとうございます」
氷を頬に当てていると望月があまりにもじっと観察するものだから、莉々子はする必要のない緊張に包まれる。
そこまで心配するような火傷ではない。ちょっとお湯が跳ねただけだ。
「もう大丈夫ですから」
顔から氷を放すと、望月が「赤くなったな」と頬に触れる。
「へ、平気です」