俺様社長に甘く奪われました
顔を背けることでその手から離れたものの、今度は肩に下りた手に軽く引き寄せられた。そして瞬きするほどの時間で彼のひんやりとした唇が火傷部分に触れたものだから、莉々子の身体が一瞬で強張る。
避けられなかったのは、さっきのキス同様にあまりの早業だったから。棒立ち状態でいると、次には気を持たせるように口へと移動した唇が軽く触れて離れる。そして、もう一度ゆっくりと重なった。
「どうして避けない」
「えっ……」
望月に聞かれて莉々子はギクリとした。
「今のは避けられただろ」
「そ、それはっ……」
そのとおりだっただけに莉々子は言い訳すら出てこない。望月の唇が頬から離れたときにキスを回避できたはず。
「今のはイエスととっていいってことだな」
「待ってください。違うんです……!」
望月と恋を始めることに対する了承の返事ではない。突然のキスで身体がフリーズしてしまったから。まさか唇にはキスしないだろうと高をくくっていたからだ。
あとづけだと思えなくもない理由を莉々子は見つける。