俺様社長に甘く奪われました
「まぁいいだろう。今度は気をつけろよ」
「はいっ?」
「火傷だ」
「……あ、あぁはい」
望月のキスに注意しろということなのかと思ってしまった。
望月はポケットに片手を突っ込んで莉々子に背を向けた。
それからのことを莉々子はよく覚えていない。自分のことがわからなくなり、望月とのキスばかりが頭を占拠したせいだ。
望月がやたらと『うまい』を連呼したことはよく覚えているから、ペペロンチーノはなんとか完成したようだった。
莉々子の意識がきちんと現実世界に戻ったのは、望月の車で送られたアパートの前。望月は、ほのかに甘い余韻を残して走り去ったのだった。