俺様社長に甘く奪われました
危ういミッション
「……ちゃん、莉々ちゃん」
名前を呼ばれたことに気づき、ハッとして我に返る。
(私ときたら、仕事中にぼんやりするなんて……)
莉々子は慌てて表情を引き締めた。
「今日は朝から様子が変ね。どうかしたの? なにかあった?」
隣の席の志乃が莉々子の顔を覗き込むようにして首を傾げる。
「あ、いえ、大丈夫です」
昨夜のことをこんなところで白状するわけにもいかず、一時間ほど前に自分で入れてきたコーヒーに口をつけるとすっかり冷めきっていた。
「……もしかして社長とまたなにか?」
志乃が声をひそめて尋ねるものだから、コーヒーを噴き出してしまうところだった。志乃が鋭いのか、それとも莉々子がわかりやすいのか。とにかく今は仕事中。余計なおしゃべりをしている場合ではない。