俺様社長に甘く奪われました
志乃にも「どうぞ」と勧めると、彼女は早速手に塗ってみた。
「伸びはあまり良くないけど確かに潤うわね」
「そうなんです」
「これ、どこで買ったの?」
「あ……えっと、実は友達の中国土産で……」
望月にもらったものだとはすんなり言えない。
「志乃さんも自由に使ってください。ここに入れておきますから」
莉々子がデスクの引き出しを開け閉めする。
「そう? それじゃお言葉に甘えて」
志乃が手にハンドクリームをすり込んだところで、木村が「そろそろ行きましょうか」とふたりのところへやってきた。このあと木村と志乃の三人で、完成したばかりの【新千葉物流センター】へ行くことになっている。
それは朝ソリが手掛けた大手食品メーカー【株式会社アビー】の物流センターで、二週間後には落成式も控える。稼働後の運営も朝ソリが担っているため、落成式の案内から進行のいっさいを取り仕切ることになっている。イベントの手配は総務部の仕事でもあり、その下見のためだった。