俺様社長に甘く奪われました
「とにかく戻ってきたんだからよかったじゃないですか」
「うん、そうだね。ありがとう、松永くん」
「いえいえ、どういたしまして」
ニコニコしながら松永は再び総務部をあとにした。
手元に戻ることはないだろうと諦めていたから、思わぬことに嬉しくなる。捨てた記憶はないが、とにかくよかった。
「よかったわね、莉々ちゃん」
「はい、志乃さんにもご心配をお掛けしました」
「ううん、とんでもない」
志乃が手をひらひらと振ったところで、来客を終えた木村が総務部に戻ってきた。
「私、お茶の片づけやってくるわね」
立ち上がりかけた志乃を莉々子が引き留める。お茶入れを先輩にやらせてしまったのだから、片づけは自分が。
「それなら私がやりますよ」
「ううん、大丈夫よ」
そう言って席を立った志乃は、ものの一分で戻ってきた。顔の前で両手を合わせる。
「莉々ちゃん、ごめん、やっぱりお願いできる? 私、秘書室の人に落成式のことで急いで確認することがあるのを忘れていたの」
「もちろんです。任せてください」