俺様社長に甘く奪われました

「すみません、洗っていたらコーヒーカップが割れて……」


 莉々子には力を入れたつもりはまったくなかった。もしかしたら、すでにヒビが入っていたのかもしれない。


「とにかく病院へ行くぞ。上田さん、車の手配をして」
「は、はい!」
「それと、ここの後片づけは……キミ、頼んだぞ。それから総務部にも一報を入れてくれ」
「はい!」


 奏多はてきぱきと指示をすると、莉々子を抱き上げ歩きだした。


「あのっ、自分で歩けます」
「足が震えてるじゃないか。そんな状態では歩けないだろ。大丈夫か?」
「……はい」


 そうは答えたものの、血を見たショックと切った痛みが増していく。


「顔色が悪いな……。心配するな、すぐに病院に連れていってやるから」


 大した傷ではないはずなのに、優しい言葉を掛けられて、莉々子はなぜか胸がいっぱいになり涙がこぼれる。

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