俺様社長に甘く奪われました
「なんだよ、そんなに痛いのか?」
莉々子が首を横に振る。
「……ホッとしたんです。奏多さんの顔を見たら」
「……バカだな」
誰もいないエレベーターで奏多が莉々子にコツンと額を重ねる。
「大丈夫だ、俺がいるから」
心強い言葉に莉々子はうなずいた。
上田が手配をしたハイヤーは、奏多に抱き上げられて階下に着いたときには既にエントランス前に停車していた。
すぐに近くの病院へと連れられ、怪我の処置が素早く施される。
幸い手の傷は深手ではなく、分厚い絆創膏を何枚か貼るだけで済んだ。
「週末は俺のマンションで過ごそう」
「どうしてですか?」
「その身体じゃ不自由だろう」
「このくらい平気です」
手を切ったときには驚いて大怪我を負った感覚でいたが、軽症だったのだ。奏多に面倒をかけるわけにはいかない。