俺様社長に甘く奪われました

「……志乃さん?」


 急に電話の向こうが静かになった。切れたのかと思い莉々子はスマホを耳から離してみたが、まだ繋がっているようだ。


「志乃さん?」


 莉々子がもう一度呼びかけたところで、ようやく『あ、ごめんね。ちょっと電波が安定しなくて』と志乃が答える。


『社長のところにいるのね。それじゃ安心だわ』
「ご心配をお掛けしてすみません」
『ううん。それじゃお大事にね』


 志乃との電話を切ったところで、コーヒーを淹れた奏多が隣に座った。


「会社からか?」
「はい、志乃さんです。そんなことより、やっぱりまだ仕事が残っていたんじゃないですか。私なら平気ですから、今からでも戻ってください」
「なーに言ってんだ」


 力を込めて訴えると、奏多は莉々子の頭を指先で軽く弾いた。

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