俺様社長に甘く奪われました
「怪我した莉々子を放っておけるわけがないだろ。さっきのしおらしい莉々子はどこへいった?」
「はい?」
「俺の顔を見てホッとしたと言って泣いた莉々子は」
いたずらに目を細めて、奏多が意地悪なことを言う。
「あのときは怪我した直後だったから……!」
奏多の顔を見た瞬間、莉々子は心底安心してしまったのだ。
だが正直言ってしまうと、今もひとりにはなりたくない。怪我はめったにしたことがなく、口では仕事へ行ってと言いながらも、実際に奏多が行ってしまったらきっと心細くなるだろう。
莉々子が思わず彼のシャツを握ると、その手を取って奏多が指を絡める。
「素直じゃないな、莉々子は」
クスッと彼が笑う。
「行かないよ。月曜の朝まで莉々子とここにいる」
「……ありがとうございます」