俺様社長に甘く奪われました
照れくささが邪魔をして、向かいに座り、キャンドルの優しい光に照らされた奏多の顔を莉々子は見られない。グラスに注がれるワインにもキャンドルが映り込み、莉々子の気分をいっそう盛り上げた。
数種の豆と野菜のマリネ、安納小金のポタージュ、国産牛ランイチの炭火焼きなど次から次へと運ばれる料理を食べながら、向かいからは奏多の甘い眼差しが常に注がれ、莉々子は夢見心地だった。
食事を堪能し、ふたりは夜景が煌めく甲板へと出てきた。どことなく湿気を含んだ潮風が、莉々子の頬を撫でていく。その風のごとくかすめるようにして莉々子の頬に奏多の唇が触れたと思ったら、彼はそのまま彼女を引き寄せた。
「奏多さん、こんなに素敵なところに連れてきてくださってありがとうございます」
「正直、莉々子は嫌がるかと心配したが」
莉々子が首を横に振る。奏多に言ってしまった昔の言葉を取り消したい気分でいっぱいだった。
「奏多さんとこんなに素敵な夜を過ごせるなんて本当に嬉しいです」
奏多と一緒ならば、どこであっても最高の時間を過ごせるが、今夜はまた格別。莉々子は夢のような時間がもっと続けばいいのにと願わずにはいられなかった。