俺様社長に甘く奪われました
再会は苦い痛みを連れて

 それから二日が過ぎ、いよいよ新千葉物流センターの落成式の日を迎えた。
 総務部内は朝から大わらわだ。開始時刻は午後一時。会場の準備もあるため、九時半にはここを出発することになっている。


「さて、そろそろ行きましょうかね」


 木村が部内に声を掛けたときだった。莉々子のスマホがバッグの中で鳴り始める。

(忙しいのに誰だろう……)

 そう思いつつ取り出してみれば、それは現地に直行していた松永からの電話だった。


「もしもし、どうしたの?」
『莉々子さん、備品類の発注はしたんですよね?』
「え? もちろんしたよ」


 いつもお世話になっている業者に二週間前に発注を済ませてある。


『それが、届いていないんですよ』
「えっ!?」


 セレモニーに必要な備品は、紅白幕やパイプ椅子、講演台などかさばるものもある。ここから運び込むより直接現地着にしたほうが効率がいいからと、朝ソリ着ではなく物流センターにある守衛室に届くように手配してあったのだ。

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