俺様社長に甘く奪われました

 手まで震えて、スマホをタップする指が定まらない。


「莉々ちゃん、落ち着いて」


 志乃が背中をトントンと優しくさすったが、莉々子の震えはどうにも止まらなかった。


「あの、みなさんは先に現地に向かってください。私はなんとか手配してから向かいます」


 セレモニー当日の総務部の役割は、手配した備品類の設置だけではなく、招待した企業への案内などもあるのだ。


「ひとりで大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」


 正直言えば心細い。だが、そんなことを言っている場合ではない。自分のミスは自分でなんとかしなくては。


「それじゃ頼みましたよ。我々は向こうで備品の到着を待っていますから」
「莉々ちゃん、なにかあったら連絡ちょうだい」


 木村と志乃にうなずき、莉々子はふたりをその場で見送った。

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