俺様社長に甘く奪われました

「……奏多さん」


 名前を呼んだ莉々子の唇が塞がれる。奏多は彼女の腰を引き寄せ、いつになく激しくキスを求めた。酸素を求めて開いた口から入り込んだ舌が、荒々しく莉々子の口内をかき回す。


「……か、かな……さん、ちょっ……待って……」
「待たない」


 そう言うが早いか、奏多はベッドルームへと莉々子を抱き上げた。

 ベッドに横たえ、彼女の素肌に指先を這わせる。息つく暇もないほどの口づけと奏多の滑らかな指先に翻弄され、莉々子はなにも考えられなくなっていく。ただ奏多を感じ、奏多を見つめ、奏多に身を委ねた。


 何度となく抱き合い、ともに果てたベッドで奏多が莉々子をそっと抱き締める。


「……悪かった。こんなつもりじゃなかったんだ」


 その腕の中で莉々子は首を横に振り、「私こそ、ごめんなさい」と奏多の胸にしがみついた。


「アイツのこと、まだ忘れられないのか?」
「違うんです」

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