俺様社長に甘く奪われました
それはきっぱりと言える。莉々子は気持ちが残っていたわけではなく、別れの理由に納得ができないだけだった。
「それじゃ、どうして会いに行った」
「彼に言われた言葉が、ずっと心に引っかかっていたんです」
喉に刺さった魚の骨のように、なかなか取れなくて苛立ちすら感じるほどに。
「好きになってもらえなかったのなら、その原因を知りたかった。私のどこかに悪いところがあるのなら、奏多さんにだって嫌われる可能性がありますから。だから、それを知りたかったんです」
莉々子は最初、そうだと思っていた。祥真に会いに行く理由は、確かにそこにあった。
「でも、それだけじゃありませんでした」
「……それだけじゃない?」
奏多が目を眇めて莉々子を見つめる。
「愛されていた確証がほしかったんです。……私だけが傷ついたことを許せなかったのかもしれません。……嫌な女ですね」
祥真も確かに自分を好きだったと知り、気持ちが軽くなったのはそのためだろう。やっとあの頃の自分が報われたと。傷ついて悩んで、恋にも臆病になっていたが、これで本当の意味で前に進んでいくことができる。莉々子は、ようやく過去の恋に終止符が打てたのだ。