俺様社長に甘く奪われました
「いや、嫌なことなど全然ない。あんな言葉をぶつけられれば当然だ」
別れの場面に居合わせた奏多だからこそ、そう思えるのだろう。
「アイツに『もう一度』と言われて、心は揺れなかったか?」
「……動揺はしました。でも、私には奏多さんがいるから。今の私は奏多さんしか見えないんです」
「それなら……」
奏多が身体を起こし、莉々子を再び組み敷く。
「二度とアイツの名前を口にするな。俺以外の男の名前を呼ぶな」
「……え?」
「いや、それができないほど俺で満たしてやる」
降りてきた奏多の唇は、荒々しかったさっきまでのキスとは違い、もどかしいほどに優しく繊細で、それがかえって莉々子を高ぶらせる。募る愛しさが莉々子の胸を締めつけた。
「……奏多さん、愛してます」
唇が触れるか触れないかの距離で吐息交じりに囁くと、重ねた手のひらに奏多の力が込められる。頬を撫でる指先が思わせぶりに首筋へと伝い、さらに鎖骨、胸元へと滑り落ちていく。
「莉々子、俺もだ。愛してる……」
奏多の甘い声が鼓膜を震わせ、莉々子の胸の奥まで響く。これ以上ないほどに幸せで、逆に失うことが怖くなった。このままずっと奏多と繋がっていたい。奏多への恋情は尽きることなく溢れていった。