俺様社長に甘く奪われました
真紀にそう言われて莉々子の頬が熱を持つ。昨夜の奏多は、まさに嫉妬に燃えた獣のようだった。だが、そうして妬いてもらえたことが、莉々子は正直言って嬉しい。
『今、思い出してたでしょ』
「えっ、ち、違うよ……!」
『やだなぁ、莉々子ってば、ほんとエッチなんだから』
「だから、違うのー!」
そう否定した直後、莉々子の手からスマホが抜き取られる。なにかと思って振り向けば、そこには別のシャツをはらりと羽織った奏多が立っていた。ボタンの留まっていないシャツの間から覗く胸元に、朝にも関わらず莉々子をドキッとさせる。
「か、奏多さん、返してください」
莉々子が伸ばした手をものともせず、奏多が話し始める。
「もしもし、望月です。沢田さん、昨日はご連絡ありがとうございました」
電話の向こうで真紀が戸惑っている声が、かすかに聞こえた。いきなり奏多に代わったものだから、相当驚いただろう。