俺様社長に甘く奪われました
「奏多さん、あの曲を弾いてください」
ル・シェルブルのラウンジで弾いていた、あの美しい曲。ショパンの……。
「別れの曲?」
「そう、それです」
莉々子が人差し指を立てて奏多に突き出す。
「タイトル的に弾く気になれない」
そんなところを気にするのかと莉々子は思わずクスッと笑ってしまい、奏多が「なんだ」と冷ややかな視線で睨む。
無下なく却下されたものの、奏多の弾く別れの曲を最初から最後まで聴いてみたい。
「単なるタイトルですし、お願いします」
「それじゃ、今夜も帰さないぞ」
「……奏多さんがそうしてもいいって言うなら、ここにいます」
莉々子が肩に頭を預けると、奏多は仕方がないなというように小さく息を吐き、両手を鍵盤に置いた。あの旋律を奏でられると、穏やかなようでいて切ない曲調が胸に染み込んでいく。心地良い調べに目を閉じ、莉々子はそのまま奏多の肩にもたれた。