俺様社長に甘く奪われました
さよならへのカウントダウン
奏多と気持ちを確かめ合った夜から一ヶ月が過ぎ、六月も中盤。そろそろ梅雨の気配を感じる季節になった。気温はまだそれほど上がってはいないが、肌にまとわりつくような湿気は不快指数が高い。
莉々子は、その日の業務を終えて志乃とふたりで駅へと向かっていた。
「社長とは、その後どうなの?」
「はい、おかげさまで仲良くやっています」
今日も、このまま奏多のマンションへ行くことになっていた。
「そう」
志乃の横顔がどこか沈んでいるように見える。どことなく声にも張りがないが、仕事で疲れてしまったか。
「志乃さん、なにかありましたか?」
「え? どうして?」
「なんだか元気がないように見えて」
こうして莉々子から尋ねるのは珍しいことかもしれない。いつも志乃のほうが莉々子を心配して声を掛けてくれることが多かった。
「……ううん、そんなことはないわ」