俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
スクランブル交差点での一件以降、莉々子は奏多に言われたとおり会社でもなるべくひとりでいることを避け、行き帰りも奏多の車でこっそり一緒に通勤していた。
二週間が過ぎ、季節は梅雨本番を迎えた。
なにかと災難が降りかかったのは気のせいだったのかもしれない。たまたま悪いことが重なっただけで、階段でも交差点でも、背中を押されたように感じたのは思い込みだったんじゃないか。あれ以降なにも起こらないことから、莉々子はそんなふうに楽観的に考え始めるようになっていた。
奏多との帰り道、彼の運転する車がいつもと違う道を走っていることにふと気づく。
「どこかへ寄るんですか?」
そう問いかけながら見た奏多の表情が、どことなく硬い。前を見たままぶっきらぼうに彼は「莉々子の部屋」と答えた。
「……私の部屋ですか?」
この二週間は初日に荷物を取りに寄ったきり。ずっと奏多の部屋で過ごしてきた。
「特に必要なものはないんですけど……。もしかして、今夜は私の部屋に泊まるってことですか? それなら掃除をし――」
「違う」