俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
どうしてこんなことになったのだろう。仕事中も考えるのはそのことばかり。
(責任を持って幸せにすると真紀に誓ったのは嘘だったの? 俺が守ると言ったのも……)
そう彼を責めるいっぽうで、『面倒になった』という奏多の別れの言葉から、自分があまりにも彼に迷惑を掛けていたのだとも思い知る。
仕事ではミスをカバーさせ、怪我をしたときには病院まで運んでもらい、スクランブル交差点では車に轢かれるところを助けられた。ことごとく奏多の手を煩わせていたのだ。
(奏多さんが嫌気をさしても無理はなかったのかも……)
なにをしていても奏多とのことが頭から離れない。せめてもの救いは、先日開催された株主総会の後処理の手伝いで忙しいことだった。莉々子は直接の担当ではないが、議事録の作成や取締役会開催の手配に手を貸していた。
そんな毎日を過ごしているうちに、気づけば一週間が経過。ほとんど眠れていないせいか、いつにも増して体調が良くない。
「莉々子さん、大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ?」
たまたま通路で会った松永にまで心配されてしまった。