俺様社長に甘く奪われました

◇◇◇

 久しぶりによく眠った気がする。点滴の効果なのか身体も軽い。
 昨日とは格段に違う体調で出勤すると、総務部のみんなに「出勤して大丈夫?」と心配されてしまった。


「ご心配とご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
「このところの莉々子さんは、ある意味トラブルメーカーですね」


 松永の厳しいひと言に反論の余地もない。莉々子は肩をすくめて縮こまった。
 本当にそのとおりだ。仕事のミスに怪我。挙句の果てに倒れるとは情けない。


「……すみません」
「まぁまぁ、誰にだって悪いことが続くときはあるものですよ」


 いつものように木村が仲裁に入る。優しい笑みを向けられ、莉々子はホッとした。


「そうよ、松永くん。莉々ちゃんをあんまりいじめないの。『莉々子さん、大丈夫かな』って人一番心配してたのは誰?」


 志乃に言われ、松永は「勘弁してくださいよぉ」と頭をしきりに掻いた。

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