俺様社長に甘く奪われました

「ところで莉々子さん、アビーの社長と知り合いだったんですか?」
「あ、うん……」


 やはり聞かれてしまった。昨日のあの状況では無理もないことだ。


「驚きましたよ。『俺が病院へ連れていきます』って颯爽と莉々子さんを抱き上げるんですもん」


 松永が身振り手振りで説明する。みんなには既に昨日から何度も話したのか、「また始まったわ」と半ば呆れ顔で志乃が笑った。


「……昔の知り合いなの」
「とかなんとか言っちゃって、彼氏だったりして」
「相沢社長は結婚してるんだから失礼なことは言わないの」


 莉々子がからかい始めた彼を睨むと、「なーんだ、つまらないな」と眉を上下に動かし、松永は不満そうに自分の席へと戻った。


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