俺様社長に甘く奪われました

「奏多、いなかった? それなら私の部屋へいらっしゃらない? 実はおいしいケーキを買ってきたところなの」


 そう言って百合が小さな箱を莉々子に見せる。そして、「さぁ行きましょう」と彼女の手を取ってオートロックを抜けた。

 百合のしなやかな手を振りほどくことができず、莉々子は誘われるままに彼女の部屋へと引き入れられる。造りはまったく同じながらもスタイリッシュな奏多の部屋とは違い、ところどころに花が飾られ、全体的に暖色系のカラーで統一された女性らしさに溢れた空間だった。


「座って待ってて。今、紅茶を淹れてくるわね」


 莉々子をソファに座らせてから百合がキッチンへ向かう。しばらくするとオレンジペコの甘い香りとともにお洒落な柄の皿にケーキをのせて、百合が戻った。


「そうだ、せっかくだから奏多も呼びましょうよ」
「えっ……」


 百合が嬉しそうにスマホを操作し始めたものだから、急いで「待ってください!」と引き留める。

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