俺様社長に甘く奪われました

「……私たち、お別れしたんです」


 百合の醸し出す優しい空気に絆されて、つい告白してしまった。百合を騙している気がしてならず、言わずにいることはどうしてもできなかった。


「まさか! 嘘でしょう?」


 まるで信じられないといったように百合が大きく目を見開く。


「……振られてしまいました。せっかくこうして優しくしてくださったのに申し訳ありません」


 頭を下げることしかできない。いろいろとよくしてくれた百合に、こんな報告しかできないことは辛かった。


「そんなはずはないわ。だって、奏多から莉々子さんとの将来を考えてるって聞いたのは、まだそれほど前のことじゃないもの」
「奏多さんがそんなことを……?」


 思いがけないことを聞いて心が揺れる。


「ええ。だから奏多が莉々子さんと別れようとするはずがないわ」
「……ですが、そのあとにきっと嫌になってしまったんだと……」

< 273 / 326 >

この作品をシェア

pagetop