俺様社長に甘く奪われました
百合にその話をしたときには本気でそう考えてくれていたのかもしれない。でも、人の心は変わりやすいもの。なにかのきっかけで正反対のほうを向くこともあるだろう。現に、金持ちを頑なに拒んでいた莉々子の気持ちも、奏多によってあっさりと覆されてしまったのだから。
積もり積もって、あるきっかけで自分のことが嫌いになったのだろうと思うしかなかった。
「親バカだと思わないでほしいんだけど、奏多は平気で人を傷つけたり、気持ちを踏みにじったりするような子じゃないわ。奏多がまだ小さい頃、私もいろいろあって泣いてばかりでね。そんなときはいつも奏多が小さな手で私を抱き締めてくれたの。『お願いだから、もう泣かないで』って。普段の奏多はぶっきらぼうで愛想のひとつもないけど、莉々子さんを安易に傷つけたりしないはず。きっとなにかあったのよ」
百合はポツリポツリと莉々子に話して聞かせた。
その“なにか”が、莉々子に頻発したトラブルなのではないか。松永にまでトラブルメーカーだと言われたくらいだから、よほど嫌気が差すきっかけだった可能性が高い。
「無茶なことを言って悪いんだけど、奏多のことを嫌いにならないであげて」