俺様社長に甘く奪われました
ひとりで部屋にいると、どうしても考えるのは奏多のこと。気分をリフレッシュするには、真紀がきてくれたほうがいいかもしれない。
顔では不満そうにしながら、莉々子はありがたい気持ちでいっぱいだった。
「なにが食べたい? 特別に今夜は私が作ってあげるよ」
「え? 真紀の手料理? 大丈夫なの?」
なんせ真紀は実家暮らし。料理の“りょ”の字も知らないのだ。なにを食べさせられるのかと莉々子が不安に思うのも当然だ。
「この頃やるようになったの。だから莉々子が実験台」
「ちょっとなにそれ!」
少し騒がしいやり取りをしながらエントランスから出たところで、いきなり「莉々子」と呼び止められ、頭の中が軽くかく乱される。
「……祥真」
そこにいたのは祥真だったのだ。
「祥真さん?」
隣で真紀が莉々子と彼を見比べる。