俺様社長に甘く奪われました

 そうして数十分後、莉々子が連れられてきたのは思いも寄らない場所だった。


「……ここでなにをするの?」


 そう聞かずにはいられない。以前、奏多とアクシデントで泊まったことのある高級ホテル、ル・シェルブルだったのだ。場所が場所だけに、莉々子が勘繰るのも無理はないだろう。

 エントランスの前でポーターに車を預け、祥真が彼女をエスコートしてフロントへ向かう。
 言われるままにこんなところまで来てしまったことを後悔したところで、もう遅いような気がした。


「ねぇ、祥真……」


 莉々子の呼びかけにも微笑み返すばかり。なにを考えているのかまったくわからない。フロントで手続きをしている様子から、部屋をとっているのは確実。このあと自分たちがどうなるのか考えるのも怖かった。

 祥真が案内したのは、ラウンジのある最上階のひとつ階下。意図せず奏多とひと晩過ごした、あのロイヤルスイートルームだった。


「……どうしてこんなことをするの? なにがしたいの?」

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