俺様社長に甘く奪われました
奏多のことを許せないからといって、こんなところに連れてくる理由がわからない。祥真の考えていることを莉々子はなにひとつ理解できなかった。
「まぁいいから座って」
「でもっ……!」
祥真は莉々子の背中をぐいぐい押して大きなソファへ座らせると、自分は歩きながら胸元から取り出したスマホで電話を掛け始めた。
「アビーの相沢です」
仕事が残っているのなら、こんなところへ連れ出している場合ではないだろう。
そんなことを考えながらその様子を伺っていると、祥真が信じられないことを口にする。
「莉々子を預かっています。一時間以内に連れ戻しに来なければ、私があなたから莉々子を取り戻します」
「祥真!? まさか奏多さんに掛けてるの!?」
驚きのあまりソファから飛び上がり、急いで祥真の腕を掴む。ところがスマホを取り上げようとした手は、素早く身を翻した祥真に阻止されてしまった。