俺様社長に甘く奪われました
「私も大きな覚悟を持って莉々子をさらいました。ル・シェルブルのロイヤルスイートにいます。猶予は一時間。いいですか? それ以上は絶対に待ちません」
そこまで淡々と言い終えると、祥真は通話を切ってしまった。
「どういうこと!? なんで奏多さんに電話なんて!」
「アイツのことが許せないって言ったよね?」
「だからってどうして……! 奏多さんがここに来るはずがないじゃない」
莉々子は振られたのだ。面倒だと嫌われたのだ。こんなことをしたら、余計に手のかかる女だと思われるだけ。
「来ないなら来ないで、俺には好都合だな。遠慮なく莉々子を手に入れられるから」
「そんなのおかしいよ! だって祥真には――」
「すべてをなげうつ覚悟だ。妻とは離婚に向けて話し合いが進んでいる」
とんでもない宣言をしているのに祥真が涼しげに微笑む。動揺する莉々子とは対照的に落ち着き払った様子だ。その左手の薬指に、煌めくリングはなかった。
「私は祥真とはもう……」