俺様社長に甘く奪われました
ホッと胸を撫で下ろす。
「志乃さんは今、どうしているんですか?」
「母方の実家がある仙台にいるそうだ」
これには奏多が答えた。
「そうですか……」
不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとして解雇された志乃には、それが一番だろう。
「これですべて終わったよ。もうなにも怖がることはない」
膝に置いた莉々子の手に奏多の手が重ねられる。
「それから、これはあちらの弁護士から預かったものだそうだ」
奏多は白い封書を莉々子に手渡した。表には『倉木莉々子様』とあり、裏を返してみれば『鎌田志乃』と署名がある。
「これ、志乃さんから!?」
「倉木さんにお渡ししてほしいとのことでした」