俺様社長に甘く奪われました

 奏多の見立てで買ってもらったワンピースは、ハイウエストのラインにリボンが施されたかわいらしいデザイン。
 奏多は莉々子の肩を引き寄せ、髪に軽くキスを落とした。

 奏多の心強い言葉とキスで気持ちを落ち着かせ、いざ店へと入る。すぐに出迎えてくれた着物姿のスタッフに連れられ、一番奥の個室へと案内された。

 速まっていく鼓動が、どうにも制御できない。見合いの席へ乗り込んだときに、東条から向けられた冷ややかな目と辛辣な言葉を思い出すと、今すぐ回れ右をして逃げたしたい気分にすらなってしまう。

 なにしろ莉々子は、大事な席をぶちこわした張本人だと思われているのだ。百合からも東条が怒っていると聞いているだけに、平常心を保つのは至難の技。

 小上がりの向こうの引き戸が開けられた瞬間、あまりの緊張と恐ろしさから莉々子は咄嗟に俯く。奏多にエスコートされて、ぎこちない動きで座敷に正座をした。


「改めて紹介します。倉木莉々子さんです」


 奏多に紹介されたあと、「倉木莉々子と申します」と腰を折り、そこでようやく東条を見る。

 白髪交じりの豊富な髪を自然な感じにまとめ、莉々子を射るような目つきはこの前と同じ。その目に怯みながら隣の百合へ視線を動かしてみれば、優しい笑みでにこやかにうなずいてくれた。まったく対照的なふたりだ。

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