俺様社長に甘く奪われました
「それじゃ、お見合いの席に乗り込んできたことは、もう水に流してあげるわよね?」
東条は「え?」と目を剥いてから、それには「うーん」と腕組みをする。
「お相手にも謝罪は済んでいるんですし、源之助さんクラスの大物が、そんな小さなことにいつまでもこだわったりなんかしないわよね?」
「……当然じゃないか、百合ちゃん。そんな些細なことにいつまでも腹を立てていたら、男として失格だからね」
百合は東条に見えないように、莉々子たちに向かってにっこりと微笑んだ。“してやったり”といった表情に見えなくもない。
「まぁ、そういうわけだから、莉々子さん、奏多をよろしく頼んだよ」
「はい!」
まさかの快諾をもらえて、莉々子は一気に身体から重しが取られたような感覚だった。奏多と付き合っていくうえで一番の不安材料だったことが解決し、やっと心から笑える気がする。
喜びいっぱいに奏多を見つめると、彼は莉々子の手をそっと握った。