俺様社長に甘く奪われました

「今のはなんて曲ですか?」
「リストの愛の夢」
「すごくよかったです……」


 ショパンの別れの曲も今のリストも、すごく繊細で優美。できることなら、もっと聴いていたい。


「莉々子」


 ふと立ち上がった奏多が莉々子の手を取る。その目がいつになく真剣に思えて、わけもなく鼓動が乱れた。


「……どうかしたんですか?」


 見上げた先には奏多の揺れる瞳がある。


「結婚しよう」


 なにを言われたのか、莉々子はすぐに理解ができない。思わぬ言葉がキーとなり、頭がバグを起こしたよう。目を見開いたまま奏多を見つめ続けた。


「おい、聞いてるのか?」
「……は、はい。でも信じられなくて……」

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