俺様社長に甘く奪われました
(今までの私たちはなんだったの……)
込み上げてくる感情を抑えきれず、涙が溢れてくるのを止められなかった。握り潰されたように胸が苦しい。呼吸もうまくできず、流れる涙のままに肩を小さく震わせた。
ふと彼がその肩を引き寄せ、莉々子を抱き締める。
莉々子はそれに抗うことなく身体を預け、彼の胸に顔を埋めて泣きじゃくった。
信じて疑わなかった愛は幻。未来に見えた幸せは、莉々子の思い違い。
これまでの一年半が自分のひとり舞台だったという真実を突きつけられ、あとからあとから涙が激しく放出された。
ひとしきり泣き、ようやく呼吸も落ち着いた頃。ゆっくりと顔を上げた先に、ずっと莉々子を抱き締めていてくれた彼の涼しげな瞳があった。
「……すみませんでした」
慌てて離れようとしたところを彼が引き留める。彼は、涙に濡れた莉々子の頬を滑らかな指先でゆっくりと拭った。
「少しは落ち着いたか?」
「……はい」