俺様社長に甘く奪われました
悲しい記憶と軽率な自分

 今日からまたいつもと変わらない一週間が始まる。


「莉々ちゃん、なんかお疲れモード? 週末に遊びすぎちゃった?」


 隣の席の志乃が、髪を耳に掛ける仕草をしながら莉々子を見て微笑んだ。彼女もいつもと変わらず美しい。


「土曜日の夜にちょっと飲みすぎてしまいました……」
「そうだったの」


 志乃が口に手を当ててふふふと笑う。
 普段の莉々子ならば志乃に打ち明けてしまうところだが、望月とひと晩一緒だったことはさすがに言えない。

 あの朝、莉々子は慌てて自宅アパートに帰ってシャワーを浴び、なんとか記憶を呼び起こそうとしたものの、望月に元彼の話をしたあたりからよく覚えていないのだ。彼がなにか妙なことを言ったような気はするものの、それが現実だったのかさえ定かではない。
 莉々子の身体に“行為”の痕跡は幸い見つけられなかったが、下着姿で望月の隣に寝ていたことはとんでもない大失態だ。


「莉々子さんも疲れがなかなか抜けないお年頃ってやつですね」


 向かいの席の松永が茶化した。

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