俺様社長に甘く奪われました
本当は心の中はまだぐちゃぐちゃ。細く長い糸が複雑に絡み合って、とても解けるような状態ではない。しかしこれ以上、彼の好意に甘えていつまでもしがみついているわけにもいかない。
コクンとうなずき、彼から離れようとしたところで再び目が合う。莉々子はなぜかそこから目を逸らせなくなった。絡み合った眼差しに、どこか感じる熱。強い視線が彼女を捕らえて離してはくれなかった。
ゆっくりと近づく彼の顔。逃げれば逃げられる。それなのに莉々子は彼の唇が触れる直前に、そっと瞼を閉じた。
莉々子の傷を癒すように、優しく労わるようなキスが続く。こんなにも温かい口づけがあることを知らなかった。粉々に砕け散った心が、少しずつ形を取り戻していく気がする。
受け入れるだけだった莉々子が、次第に応えるように彼の唇を軽く吸い上げると、彼は腰を強く引き寄せた。深くなっていくキスに莉々子は自分を忘れて溺れていく。
人の温もりがほしかった。誰でもいい、冷え切った心を束の間でも温めてほしかった。
だから彼に抱き上げられベッドに下ろされたときも、抵抗する気持ちはこれっぽっちもなかった。
振られた夜に別の男に抱かれる自分はどこか他人事のようで、まるで映画でも観ているような感覚。
「莉々子……」