俺様社長に甘く奪われました
よほど彼女のことが心配らしく、松永は転がる勢いで店を出ていってしまった。
望月とふたりで残された莉々子。横からはとてつもなく嫌味な視線が注がれているのを感じる。
「彼氏、いっちゃったな、莉々子」
“彼氏”部分を強調して望月がからかうように言った。偽りだと完全に見破っているのだろう。
「そ、そうですね、急用なので仕方ないです」
それでも莉々子は演技を続け、出されたウーロン茶を飲みながら隣の様子を窺う。
(このあとどうしたらいいの……! でも、一応は望月に彼氏を紹介したわけだし、今夜の用事は済んだと言ってもいいのかな。ということは私、帰ってもいい……?)
「あの……では、私もこれで……」
バッグを持って莉々子がそそくさと立ち上がると、「人選ミスだな」と望月がボソッと言った。
「じ、人選ミス、ですか……?」
「彼氏のふりをしてもらうなら、もっと演技のマシな男にしろ」